■会計知識の有無が資金調達の成否を分けることがあります。
「試算表や決算書の見方が分かりません。」「資金繰りが苦手です。」
といった声をしばしば耳にします。よくよく話を聞いてみると、「勉強したけど
理解ができない。」のではなく、「苦手意識があり、そもそも理解するつもりが
ない。」という方が殆どです。
中小企業経営者の優先順位は営業活動が一番ですので、会計周りは自分には
関係ないとお考えになるのも分かりますが、会計知識の有無で会社の命運が
決まってしまうこともあります。
経営者であれば、やはり会計の知識は身に着けておく方が良さそうです。
先日相談に来られたある社長の事例です。
起業2年目で売上高も順調に伸びていますが、赤字を理由に、
融資を断られてしまったそうです。試算表を見ると確かに赤字ですが、
在庫が計上されていません。在庫の有無を確認すると300万円ぐらいある
とおっしゃいます。
帳簿上の赤字は250万円ですので、在庫を計上すると50万円の黒字です。
そのことをお伝えすると、「やはりそうですか。自分の計算では黒字だったので
おかしいと思っていました。」とおっしゃいます。
なぜ税理士はそのような資料を作ったのか、という恨み節もありました。
しかし、この件に関して悪いのは社長です。誰を責めることもできません。
一般的に税理士は、年間の税額を計算するのが主な業務ですので、
決算時には必ず在庫を確認して計上しますが、期中は会社の方から申告がなければ、
在庫を考慮せずに試算表を作成することもあります。
金融機関の担当者はどうでしょうか。
在庫が計上されていないことぐらい気づいてくれればいいのに・・
と感じますが、そのような担当者は稀です。
貸し手には何ら落ち度のない話ですので、そこまで期待してはいけません。
融資を断られた本当の理由は分かりませんが、ただ在庫を計上していなかった
だけで断りの材料にされてしまうのはあまりにも残念です。
事業が軌道に乗り始め、仕入れを増やして拡大するせっかくのチャンスを
逃してしまうことになりました。
基本的な会計の知識はその気になれば簡単に身に付けられます。
苦手だからという一言で片づけず、理解しようと努めることをおすすめします。