■債務償還年数を算出することで調達余力が分かります。
自社の資金調達余力を把握していれば、様々な局面で正確な経営
判断が行えます。資金調達余力は、銀行員が融資を検討する時に
必ず参考にしている「債務償還年数」で分かります。
債務償還年数とは、融資先が借り入れをしすぎていないかを判断
するための指標です。借り入れが大きい(債務償還年数が長い)
ほど、新たな融資は出しにくくなります。
債務償還年数を算出するためには、まず簡易キャッシュフロー
を理解しなくてはなりません。簡易キャッシュフローとは、会社
が1年間で返済可能な額を表します。計算式は「純利益+減価償却費」
です。純利益とは税金を払った後の会社が自由に使えるお金です。
減価償却費とは帳簿上の経費であり、実際にお金が出て行った訳では
ありませんので、同額の資金が手元に残っていると考えます。
例えば、減価償却を5,000千円実施したうえで、純利益が
3,000千円出ている会社であれば、
5,000千円+3,000千円=8,000千円
が簡易キャッシュフローとなります。
年間8,000千円を返済に回すことができる会社ということです。
次は借入についてです。
債務償還年数を考えるうえでは、実際の借入額をそのまま借入額と
する訳ではありません。次の算式で導きだした額を借入額とします。
「有利子負債残高-現預金-所要運転資金」です。
有利子負債とは、役員借入金等は除いた、金融機関等からの借り入
れを指します。割引手形も含みます。
しかし一方で、保有している預金を差し引かなければ、純粋な借入額は
出ませんので、50,000千円の借入があっても、預金を20,000千円
保有していれば、実質的な借入は30,000千円と考えます。
借入に関する考え方はこれで終わりではありません。
実質的な借入額から、さらに運転資金を借入から差し引くこと
ができます。
例えば、決算書から常に10,000千円の運転資金が必要と
読み取れれば、30,000千円からさらに10,000千円
を差し引き、20,000千円が簡易キャッシュフローで返済
すべき借入額となります。
債務償還年数とは、借入を何年で返済できるか、という指標なので、
今回のケースは、借入額が20,000千円、年間の返済可能額は
8,000千円で、20,000千円÷8,000千円=2.5年
となります。
一般的に、債務償還年数が10年以内であれば正常と判断されるので、
この会社の調達余力は、年間返済額8,000千円×7.5年
(10年-2.5年)=60,000千円と導き出せます。